インサート成形に必要な基礎知識～技術・ノウハウ～

インサート成形は金属部品などを樹脂で一体成形し、複雑な機能を一体化できる成形方法ですが、複雑な成形品を作ることができるゆえに、製品の品質は、設計や金型の精度だけでなく、材料選定や成形条件、工程制御のノウハウによって大きく左右されます。本記事では、材料選定からCAE解析、位置精度管理、そして量産時の安定化技術まで、設計・試作・量産の各工程で必要となる技術についてご紹介します。ぜひご覧ください。

インサート成形時に必要となる技術

材料適合技術

インサート成形の材料の選定は、成形製品の品質と耐久性に直結する重要な要素です。特に金属と樹脂を一体化する場合、異素材の接合部の強度が低くなることがあります。その対策として、金属表面へプラズマ処理や化学的表面改質処理等を行い、接着性を向上することができます。また、金属と樹脂では線膨張率に大きな差があるため、成形時の温度変化によって残留応力が発生し、割れや変形の原因となることがあります。これに対して、樹脂側に応力を吸収するための逃げ形状を設けることで、機能性と耐久性の両立が可能となります。

成形シミュレーション技術

インサート成形では、成形時に樹脂の流動挙動が複雑になりやすく、成形不良が発生することが多々あります。そこでCAEによる樹脂流動解析を行います。このシミュレーション技術は、樹脂が金型内部をどのように流れるかを流動解析によって事前に可視化することができます。これにより、ゲート位置の最適化や冷却構造の設計が可能となり、樹脂の偏肉やヒケ、ガス溜まりといった不具合の発生を抑えることができます。

さらに、金属インサートの位置によって樹脂の流れ方が変化するため、温度分布や圧力分布の解析結果を基に成形条件を事前に調整することで、より安定した成形が可能になります。これにより、試作の回数を削減し、開発期間の短縮につながります。

位置精度管理技術

インサート成形の部品の中でも特に精密さが求められるパワーモジュールや車載用部品では、インサート位置の誤差が±0.05mm以内といった厳しい精度管理が要求されます。このような高精度のインサート配置を実現するためには、部品の位置精度を管理するために治具やアーム、カメラなどを駆使して精度管理を行います。

具体的には、専用の高精度治具を用いることで、インサート部品の位置を安定して固定します。次に、位置補正機能付きの高性能カメラを使用して、部品の位置ズレをリアルタイムで検知します。加えて、ロボットアームの高速制御技術を活用し、位置ズレを即時に補正することで、位置精度を確保します。これらの技術を複合的に用いることで、精密なインサート成形製品の製造が可能になります。

量産安定化技術

インサート成形における量産工程では、製品品質の安定化が大きな課題となっております。この対策案として、IoT 技術の活用により、成形機からリアルタイムに条件データを収集・モニタリングすることで製品品質のばらつきを最小限に抑える技術が有効とされています。
特に、微細な変動を検知し、自動で補正する「自己最適化型成形システム」が注目されており、人的負担を減らして高品質で安定生産が可能になります。

当社のインサート成形実績のご紹介

次に実際の当社の成形実績をご紹介いたします。

シャッターのモーターケース

こちらは、サイズ50×700×10のシャッター用モーターケースに関する加工事例です。加工の工夫として、両端に配置された2か所のナットをインサート成形で同時成形するのではなく、まずモーターケース本体を射出成形で成形し、その後にナットを圧入する手法を採用しました。この工程変更により、全体の工数を効率的に削減することができました。

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１次成形端子インサート成形

こちらは、パワーモジュール用ケースの加工事例です。端子部はプレス加工によって製作しており、成形時にはタイバーを設けて複数の端子を一括でセットできる構造としています。ただし、一度の成形で全体を仕上げてしまうと、不要となるタイバー部分が樹脂内に埋まり、後から除去することができなくなってしまいます。そこで、工程を二段階に分け、まず1次成形で端子を樹脂で固定し、その後、2次成形によって最終製品として仕上げる方法を採用しています。