インサート成形における成形不良「かぶり」の発生要因と対策

インサート成形は、金属や樹脂などの異素材を一体化できる工法ですが、様々な成形不良が発生するリスクがあります。本記事では、インサート成形の成形不良の一種である「かぶり」の発生原因と対策についてご紹介します。

かぶりとは?

インサート成形におけるかぶりとは、樹脂が本来充填されるべきではない、インサート部品の表面や部品と成形品の合わせ目に回り込んでしまう現象を指します。別名「バリ」や「フラッシュ」と呼ばれることもありますが、インサート成形においては特にインサート部品を覆い隠すように樹脂が流れることから「かぶり」と表現されることが多いです。

かぶりが発生すると、製品の機能不良(例:可動部の動きを阻害、電気接点の接触不良など)や外観不良につながるため、品質管理上、重要な成形不良とされています。特に、高精度が求められる場合には、わずかなかぶりも許容されません。

かぶりの主な発生原因

かぶりの発生原因は多岐にわたりますが、主に以下の4点が挙げられます。

インサート部品のセット不良

インサート部品が金型に対して正確に位置決めされていない場合や、しっかりと固定されていない場合に、部品と金型との間に隙間が生じ、そこへ樹脂が流れ込むことでかぶりが発生します。わずかな傾きやガタつきが原因となることが多く、特に小型で複雑な形状のインサート部品では注意が必要です。

金型とインサート間のシール不良

金型とインサート部品との間に、樹脂の侵入を防ぐためのシール(密着)が十分にされていない場合に、かぶりが発生しやすくなります。金型の設計段階でのクリアランス不足、金型やインサート部品の摩耗、あるいは異物の挟まりなどが原因で、密着性が損なわれることがあります。

樹脂流動性が高すぎる

使用する樹脂の流動性が設計上必要な範囲を超えて高すぎる場合も、かぶりを誘発する原因となります。流動性の高い樹脂は、わずかな隙間にも容易に侵入してしまうため、金型とインサート部品の密着性が少しでも不十分だと、樹脂が回り込んでかぶりとなって現れます。

射出圧が高すぎる

成形時に設定する射出圧が過剰に高いと、樹脂が非常に強い力で金型内に充填されます。この強い圧力が、インサート部品と金型のわずかな隙間を押し広げたり、密着を弱めたりして、樹脂が隙間に入り込みやすくなり、かぶりが発生します。

かぶりの発生対策

かぶりの発生を防ぐためには、上記で挙げた原因に対してそれぞれ異なる対策を取る必要があります。

インサート部品の確実な固定

インサート部品を金型内に確実に固定することが、かぶり対策の基本です。具体的には、インサート部品のガイドピンや保持機構の追加・最適化によって、部品がずれないよう金型にしっかりと位置決めできる構造を検討します。

金型設計の見直し

金型設計は、かぶり対策において非常に重要な要素です。インサート部品との密着性を高めるクリアランス設計として、金型とインサート部品が過不足なく密着するよう、適切なクリアランス(隙間)を設定します。必要に応じて、インサート部品が接触する面にダレ防止の溝やRをつけることも重要です。

樹脂材料の最適化

必要以上に流動性の高い樹脂ではなく、製品の要求特性と成形性を考慮した上で、かぶりを発生させにくい適切な流動性の樹脂を選定することを推奨します。また、樹脂温度が高すぎると流動性が過剰に高まるため、かぶりが発生しやすい場合は、樹脂温度を適正範囲内で下げることを検討します。

射出圧の調整

高すぎる射出圧はかぶりを誘発するため、適切な圧力設定が求められます。必要最小限の射出圧で樹脂が金型内に完全に充填されるよう、段階的に射出圧を調整します。また、保圧の最適化も重要で、保圧の高さや時間もかぶりの発生に影響を与えることがあります。保圧が高すぎると、密着が不十分な箇所から樹脂が押し出される可能性があるため、こちらも最適な設定を見つけることが大切です。

インサート成形のことならインサート成形ラボにお任せください

今回は、インサート成形における「かぶり」の原因と対策についてご紹介しました。インサート成形ラボを運営する株式会社日輝製作所では、長年培ってきた経験と実績をもとに様々な成形不良改善の実績がございます。インサート成形でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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