インサート成形に必要な基礎知識~技術者~
インサート成形の現場では、製品の品質と安定した量産体制を確保するために、各分野の専門技術者が工程を支えています。成形設計エンジニア、プロセスエンジニア、品質保証エンジニア、設備メンテナンス技術者などの技術者たちは、それぞれの専門知識と経験をもとに、精度の高い成形やトラブルの未然防止、安定稼働に従事しております。本記事では、インサート成形における各技術者の役割とその重要性をご紹介いたします。ぜひご覧ください。
インサート成形の技術者の各役割
成形設計エンジニア
インサート成形の品質は設計段階で大きく左右されます。その役割を担う成形設計エンジニアは、金型設計に加えて、樹脂の流動解析、金属との密着性、成形後の収縮や反りまでを考慮した設計を行います。ゲート位置や冷却ラインの設計一つで、成形品の精度や品質に大きな影響を与えるため、CADやCAEを用いて3次元で問題点をシミュレーションする能力が必要不可欠です。
インサート成形における失敗の多くは、金型の初期設計ミスに起因しており、トライアンドエラーを最小限に抑えるためには、設計段階での知見と経験が必要です。そのため、設計段階で精度の高い判断ができる技術者が、安定的に量産品を加工するうえで重要になります。
プロセスエンジニア(生産技術担当)
設計されたインサート成形部品を、安定的に量産するには、最適なチューニングが不可欠です。プロセスエンジニアは、温度、圧力、充填速度などのパラメータを適切に調整し、最良の成形条件を導き出します。
また、インサート部品の自動供給機構や取り出し装置の設計・導入も担当し、生産ライン全体を設計します。インサート成形製品の品質は、現場での微調整により大きく改善されることも多いため、設備や工程に対する深い知識と改善力が重要です。
品質保証エンジニア
インサート成形製品は、外観上は問題がなくても、内部に気泡や密着不良などの欠陥が生じている場合があります。これらの欠陥を特定するためには、品質保証エンジニアの高度な検査体制が必要になります。
品質保証エンジニアは、試作段階からFMEA(故障モード影響分析)を活用し、潜在的リスクを洗い出します。その上で、耐久試験、絶縁抵抗試験、高温高湿試験などの各種評価を通じて、インサート成形部品の性能を裏付けます。また、量産時にはインライン検査の仕組みを確立し、不良品の流出を防止します。
設備メンテナンス技術者
インサート成形の現場では、わずかな設備トラブルがライン全体の停止につながるため、安定稼働の維持が重要です。設備メンテナンス技術者は、成形機や金型の状態を管理する役割を担っています。具体的には、センサーによる異常検知や、PLC制御プログラムの点検・管理などを通じて、設備の安定稼働に貢献します。
当社のインサート成形事例のご紹介
自動車(EV)用ナットケース

こちらはEV(電気自動車)用のナットケースに関する加工事例です。製品サイズは158×94×23mmで、使用材料にはSPCCとPPSを採用しています。構造上、締結端子の直下にナットを配置する設計となっており、ナットと同時に成形を行うと内部に樹脂が流入するリスクがあるため、工程を2段階に分けています。まずナットを覆うケース部分を1次成形で成形し、その後ナットを挿入してから2次成形を行うことで、精度と品質を両立させた仕上がりを実現しています
ケーブルホルダー

こちらはケーブルホルダーに関する加工事例です。サイズは115×15×28mmで、使用材料にはPOMとAROSTOMERを採用しています。本製品は、2つのホルダー部品を個別に成形した場合、嵌合精度に課題が生じる懸念があったため、インサート成形による一体成形を選択しました。さらに、剛性のあるPOM製の台座に対して、粘着性を持つエラストマーを一体成形することで、ケーブルをより確実に保持できる構造となっています。当社では、樹脂とゴム素材を組み合わせた複合インサート成形にも柔軟に対応しております。
インサート成形ならインサート成形ラボにお任せください
今回は、インサート成形のエンジニアの役割と重要性についてご紹介しました。インサート成形ラボを運営する日輝製作所では豊富な経験と加工ノウハウを持った技術者が自動車・電子業界など様々な業界の製品の開発・試作を承ります。気になった方はお気軽にご相談ください。
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