インサート成形における成形不良「ショート」の発生要因と対策

インサート成形とは、金属や電子部品などの異素材部品を成形金型内にあらかじめセットし、その周囲をプラスチック樹脂で一体成形する加工方法です。これにより、部品同士の組付け工程を削減できるほか、高い強度・気密性・精度を実現することが可能になります。この記事では、インサート成形におけるショートの具体的な発生原因と、それぞれの原因に応じた効果的な対策について詳しく解説します。

ショートとは?

インサート成形におけるショートとは、金型内に樹脂が十分に充填されず、製品の一部が欠けてしまう成形不良を指します。別名、「充填不足」や「未充填」とも呼ばれ、成形品の形状が完全でない状態を意味します。ショートが発生すると、外観不良はもちろんのこと、製品本来の機能を満たせなくなるため、廃棄や再加工が必要となり、生産コストの増加や納期遅延につながります。特に、複雑な形状の製品や、肉厚の薄い部分がある製品で発生しやすい傾向があります。

ショートの主な発生要因

ショートの発生には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。ここでは、主な発生要因を具体的に解説します。

ガスによる充填不良

金型内に残存するガスが原因で、樹脂の充填が妨げられることがあります。射出された樹脂は、金型内の空気を押し出しながら充填されていきますが、ガスの排出が不十分な場合、金型内の特定の場所にガスが閉じ込められ、樹脂がそこへ到達できなくなります。特に、複雑な形状の金型や、ガス抜きが適切に設計されていない金型で発生しやすいです。

射出する樹脂量の不足

成形機から射出される樹脂の量が、製品を完全に充填するために必要な量に満たない場合にもショートが発生します。これは、そもそも設定された射出量そのものが不足していることが原因であるケースが多いです。

射出圧力

射出圧力とは、樹脂を金型内に押し込む力のことを指します。この射出圧力が低すぎる場合、樹脂が金型の隅々まで到達するだけの推進力が不足し、ショートが発生します。特に、流路が細い部分や、インサート部品が複雑に配置されている部分で樹脂の流動抵抗が大きくなるため、十分な射出圧が必要となります。

金型温度・樹脂温度の低さ

金型温度や樹脂温度が低すぎると、樹脂の流動性が低下し、金型内での流れが悪くなります。樹脂が固まりやすくなるため、途中で流れが止まってしまい、完全に充填されずにショートが発生します。特に、冬場の成形や、大型の金型で温度管理が不十分な場合に起こりやすい問題です。

ゲート詰まり

金型内のゲートは、溶融した樹脂が金型キャビティへ流入する出口です。このゲートが何らかの原因で詰まると、樹脂が適切に金型内に供給されなくなり、ショートを引き起こします。ゲートのサイズが小さすぎる、異物が混入している、あるいは樹脂の固化が早すぎるなどがゲート詰まりの原因として考えられます。

ショートの対策

ショートの発生を防ぐためには、上記の発生要因に対して具体的な対策を講じることが重要です。

金型に対してのガス抜き

金型内に閉じ込められるガスを効果的に排出するために、金型のガス抜き設計を最適化します。具体的には、パーティングラインの適切な設定、ガスベント(排気口)の追加や拡大などを検討します。これにより、樹脂がスムーズに金型内を流れるようになります。

射出量の増加

ショートの最も直接的な原因の一つである樹脂不足を解消するためには、射出量を増やすことが効果的です。成形機の設定において、計量値を適切に調整し、製品を完全に充填するために必要な樹脂量が確実に供給されるようにします。ただし、過剰な射出量はバリや製品の歪みを引き起こす可能性もあるため、最適な量を見極めることが重要です。

射出圧力・速度の向上

樹脂を金型内に確実に充填するためには、射出圧力と射出速度を適切に向上させることが有効です。圧力を上げることで樹脂がより強く押し込まれ、速度を上げることで短時間で充填が完了し、樹脂が固化する前に隅々まで行き渡りやすくなります。ただし、過度な圧力や速度は金型への負担増や製品へのダメージにつながるため、段階的に調整し、製品の品質を確認しながら最適な条件を見つけましょう。

金型温度・樹脂温度の適正化

樹脂の流動性を確保し、スムーズな充填を促すために、金型温度と樹脂温度を適正に管理することが不可欠です。特に、金型温度は樹脂の流れに大きく影響するため、温度調節器(温調機)を用いて、金型全体を均一に、かつ適切な温度に保つことが重要です。樹脂温度も、設定範囲内で最も流動性が高まる条件を探り、ショートが発生しにくい状態を維持します。

ゲート設計の見直し

ゲート詰まりや、樹脂が金型に流れ込みにくい構造がショートの原因となっている場合、ゲート設計の見直しが必要です。ゲートの断面積を拡大して樹脂の流れを良くしたり、ゲートの位置や数を最適化して、樹脂が金型の全域に均等に充填されるように改善します。また、コールドランナーやホットランナーの採用も、ゲート詰まりの解消や樹脂の流れの改善に寄与することがあります。

インサート成形のことならインサート成形ラボにお任せください

今回は、インサート成形における「ショート」の原因と対策についてご紹介しました。インサート成形ラボを運営する株式会社日輝製作所では、長年培ってきた経験と実績をもとに様々な成形不良改善の実績がございます。インサート成形でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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