インサート成形における「ボイド」発生のメカニズムと対策

インサート成形は、金属や電子部品などの異素材を樹脂中に封入する複合成形技術であり、自動車部品や電気・電子機器、医療機器などで広く使用されています。しかし、その過程においてよく見られる成形不良の一つが「ボイド(気泡)」です。ボイドは外観や寸法精度の問題にとどまらず、機械的強度や絶縁性、密閉性に影響を及ぼし、製品の品質と信頼性を大きく損なう可能性があります。
本記事では、インサート成形におけるボイドの発生原因と、その防止・対策について詳しく解説します。

ボイドとは

ボイド(void)とは、成形品内部に閉じ込められた気泡や空隙のことを指します。見た目には分からない内部欠陥であることが多く、X線検査や非破壊検査で初めて発見されることも少なくありません。インサート成形では、特にインサート部品と樹脂との界面や、流動の合流部・端部でボイドが発生しやすい傾向があります。

ボイドの主な発生原因

空気の巻き込み

樹脂がキャビティ内を流れる際、空気が適切に排出されないと、その空気が行き場を失って内部に閉じ込められ、ボイドとなります。特に、インサート部品の周辺では流路が複雑になりやすく、空気の逃げ場がなくなる傾向があります。

ガス発生(ガス焼け)

樹脂中に含まれる揮発性成分や水分が加熱されることでガスを発生し、ボイドの原因となります。ナイロン系など吸湿性の高い樹脂を用いる場合には特に注意が必要です。

圧力不足(充填不良)

射出圧力が不十分だったり、保圧が不適切だと、樹脂がキャビティ内に完全に行き渡らず、空隙が残ることがあります。これもボイドの一因です。

冷却・収縮不均一

インサート部品の熱伝導率と樹脂の収縮特性の差により、局所的な冷却不均衡が生じ、内部に応力がかかったり樹脂の引けが発生してボイドが残ることがあります。

ボイドの発生を抑えるための対策

適切なエアベント設計

金型には十分な空気抜き(ベント)構造を設け、流動方向やインサート部品周辺に効果的な空気の排出経路を確保しましょう。特に、インサート周囲にくぼみや隙間がある場合、局所ベント設計が効果的です。

樹脂の乾燥管理

吸湿性のある樹脂(ナイロン、PBT等)は成形前に十分に乾燥させることで、揮発成分によるガス発生を抑制できます。乾燥条件は樹脂メーカーの推奨値を厳守しましょう。

インサート部品の予熱

冷たいインサートをそのまま用いると、樹脂の流動が局所的に妨げられ、冷却不均衡からボイドの原因となります。インサートを事前に加熱することで、流動性を改善し密着性も向上します。

射出条件の最適化

射出速度や保圧・保圧時間などの成形条件を見直し、キャビティ内の圧力を適切に保持することが重要です。特に保圧不足はボイドの直接原因となるため、充填完了後の保圧段階での圧力監視が求められます。

金型温度の均一化

金型内の温度分布が不均一だと、局所的な冷却差が生じ、ボイドの温床となります。ヒーターや冷却チャンネルの配置見直しで、全体を均一に制御することが効果的です。

インサート成形のことなら、インサート成形ラボにお任せください!

インサート成形におけるボイド発生は、設計・材料・成形条件など多くの要因が複合的に関与する問題です。しかし、発生メカニズムを理解し、それぞれに対して適切な対策を講じることで、品質の安定化と不良率の低減を実現することが可能です。
インサート成形ラボを運営する株式会社日輝製作所では、これまでの豊富な成形実績に基づき、製品設計段階からボイド対策を考慮した成形サポートを提供しています。お困りの際は是非一度ご相談ください。

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